6.コストコ

前回のあらすじ: マラッカを駆け足で観光

 さすがに早くから起き出すことはできなかった。さすがにと言ったって、もともと早起きなんてついぞしたことはない。10時前くらいに起きて、昨晩コンビニで買った1斤の食パンを2枚くらい食べる。

  マレーシアはマレー、イスラム、中華、ヒンズーでひとセット。今日は前日見れなかったヒンズー寺院と緑瓦のモスクを見学する。ヒンズー寺院は入り口がはっきりしている。その一箇所以外はのっぺりとした塀で、入り口だけがゴテゴテと飾り付けられている。そこから入った真っ直ぐの所にもう一つ内陣のような場所があり、そこにおなじみのシヴァ神が祀られている。朝だからか人気はなく、薄暗いタイルの敷きの室内を上裸のいかにもな僧侶が花とかバナナとかろうそくとかを運んでいる。マレーシアのヒンズー寺院は典型的に、小さめの内陣が敷地中央にあり、奥の塀沿いには沢山の祠が並んでいて、この部分は露天になっている。手前の左右にも大きめの祠がある。大小の祠の前にそれぞれ供物が供えてある様子は、なんとなく日本の神社を思わせる。きっと多神教だとみんなこうなるのだろう。

  緑瓦のモスクにも人は少なかった。外からだと瓦を乗せた白い塔がやたら眩しく目立っているけれど、境内に入ると三方が開放されている正方形の祈りの空間の方がずっと存在感がある。木造の空間に濃青のカーペットが敷いてあり、多重塔の要領で作られている高い屋根の下は非常に心地よさそうだったし、その奥には水浴び場があったけれどこれがとても豪華で、ちょうど日も当たっていてちょっとした宮殿のプールといった感じだった。モスクの方はヒンズー寺院よりもずっと明るくて長閑だった。

  マレーシア国内はヒッチハイクで乗り切るつもりだった。幹線道路に出るためにしばらく歩くと、マラッカは小さな街で、20分ほどでもう街の果てといった雰囲気になった。親指を立てながら歩いていると、おっちゃんが止まってくれた。「学校へ行く」と言うので子供の送り迎えかとおもったが、彼はそこから2キロほど先のコストコに連れて行ってくれた。何をどう聞き間違えたのか。巨大なコストコだった。駐車場を含めると多分マラッカの旧市街よりも大きかったと思う。その次はなかなか捕まらなかっただけじゃなく、スコールまで降ってきた。バス停に座っていても十分に濡れた。12月はマレーシアの雨季だった。始めて1時間あまりで、ヒッチハイク計画は文字通り暗雲の下だった。エンストしたオンボロを4人で押す若衆が通り過ぎたりもした。そんなふうにしてしばらく粘っていると、ウーバー運転手のおばちゃんにポートディクソンまで乗せてもらえた。ありがたいことこの上ないけれど、ウーバーがヒッチハイクに止まっちゃダメなんじゃないのか。